日本科学未来館にてウメサオタダオ



日本科学未来館

さてさて、本日は、少し毛色を変えて、お台場にある日本科学未来館に行ってきました。科学系の公共展示施設って、結構大都市のものは充実していて、名古屋なんかにはギネス級のプラネタリウムがあったりもするのだけれども、こちらの日本科学未来館は、国営だけあって、さらに凄い施設で、デジタルでリアルタイムに近い地球儀がぶら下がっていたりもします。まぁ、税金的な問題もありますが、しかし、なかなか人のいりもいいみたいで、悪くはない施設かなとも思います。



ウメサオタダオ

で、なんで、そんなところに行ったのかというと、そこでの特別展として、ウメサオタダオ展が開催されていたから。梅棹忠夫さんは、そのバックボーンは、文化人類学とか民俗学とかそういった領域の研究者なのだけれども、世界各地を歩き回った経験もあって、斬新で的確なものの見方と言葉を持っている人物でもある。残念ながら、2010年に亡くなったのだけれども、亡くなって以降も、特にこの混乱期の現在に対する偉大な英知として語られ引用されることの多い人物。


確かテレビで

私がこの人物を知ったのは、確かテレビ番組でだったと思う。震災関連の特番で震災に対して梅棹さんがどのように感じたのだろうという仮説に対して、梅棹さんの言葉を引用しながら、様々な人が語っていた番組だったと記憶している。そして、そのときに出てきた言葉があまりにも適切であるが故に、かなり記憶に残っていて、そして、この展示を見つけたので行ってみたのでした。


ウメサオタダオ

ということで、前置きが長くなりましたが、ウメサオタダオ展。非常に天井の大きな一つのフロア全体を使った展示。このあたりは、科学未来館という場所の特性もあってなのだろう。美術館などにおける展示とは異なる大胆な展示で非常に面白いそれ。
その一つの空間を梅棹さんの人生で埋め尽くすようなそんな展示。


展示スタイル

外周をぐるりと囲むように梅棹さんの履歴とそれにまつわる遺品が並べられている。そして、中央部には、梅棹さんの様々な側面をいくつかの切り口で切ってそれにまつわるものを並べていくようなそんな展示。
なので、一カ所から順番に見て回ると言うよりは、周遊しながら、ゆっくりと梅棹哲学に浸っていくようなそんな干渉の仕方が出来る。ちなみに、写真なんかは撮っても問題なしだし、モノによっては、触ることもできるレプリカが用意されていたりもした。


分類マニア

私が感じた一つの特性は、分類マニアということ。梅棹さんが愛用していたという、様々な着想をカードに書き留めては、それをカード毎にひとまとめにしていたというスタイル(こざね法)だったり、住所録をカードにコピーしていたりするあたりは、これは、分類マニアと言いたくなるようなほどの緻密さ。


卓抜した思想家

そして、なによりも、圧倒的な思想家であるという側面。電光掲示板や垂れ幕に梅棹さんの名言が展示されているのだけれども、どれも、一瞬ちょっと戸惑ってしまうような内容でありながらも、そう表現されると確かにその通りですねって言いたくなるようなそんな言葉ばかり。つまり、独特の視点でありながらも、的確にものを表現している。多くの著作もあり、またそれらが分野として多岐にわたっているというあたりにも、梅棹さんの視野の広さというのはもうすでに十分に証明されていることで、今更私が指摘することでもないだろう。


さらに慧眼

さらに感じるのは、その明るさ。例えば、今のデジタル世界を予想していたどころか、そこにある意味を指摘しているところ。私は、梅棹さんのこのデジタル周りの言葉を見ながら、思ったのは、よく虚像にすぎないと揶揄させるデジタル・ヴァーチャルワールドだけれども、しかし、それは、むしろ、物質文明からの解放を意味しているのかもしれないということ。我々は、あまりに物質を、しかも、同質性の物質を追い求めすぎた。しかし、デジタル世界は、物質から本質だけに移動して、そして、同質であることが必要なくなった世界である。なんというすばらしきことなのかと。
それから、ワープロの出現によって、つまり、日本人の多くが、日本語をローマ字で入力しているという指摘と、さらには、現代を表現する言語として、今の日本語が適切なのかどうかと言う指摘までしているところ。これは、確かにそうなのだけれども、そんなことは私は考えても見なかった。確かに、ローマ字入力をする時点で脳の中での言語処理は、ひょっとしたら変化しているのかもしれない。


すばらしき

というところで、あまりに、刺激を受けすぎたので、言葉が過ぎてしまっているけれども、本当にこの梅棹さんはすばらしい方です。展示は、2012年2月20日までと残り少ないですが、お時間があれば、是非とも見に行っていただきたい展示であります。


関連リンク:
梅棹忠夫 - Wikipedia
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