東京都現代美術館恒例の MOTアニュアル を観てきた



MOTアニュアル2011

毎年東京都現代美術館でこの時期に行われているアニュアル展、MOTアニュアル。今年は、「Nearest Faraway|世界の深さのはかり方」というタイトルを元にした展示で、6人の作家の作品が集められていました。


地味

作品自体のスタイルのせいなのか、実際に展示が縮小したとかしているのかもしれないのですが、なんか今年は地味な展示の印象がした。むしろここに集められた作品にあわせたミニマルな展示手法をとっただけなのかもしれないが。


はかり方

「Nearest Faraway|世界の深さのはかり方」という今年のタイトルをまずどう読むのかというところなのだけれども、私は、これを「とてもはかりきれない世界の深さをそれでもはかろうとする試み」というようにとらえた。もともと現代美術というのは混迷する現代に対して、何らかの価値指標を付加しようという試みと言うことも出来ると思っているのだけれども、まさにそこを直接的に言及しているような作品の展示が集まっていると言っていいだろう。


消尽

ここで、重要なのは、はかり方と言いながら、はかりきれないという前提があるということ。結果として、サミュエル・ベケットの作品に対してジル・ドゥルーズが表現した言葉である”消尽”という言葉がまさにぴったりくる作品が多い。
どこまでも繰り返す、それは作品上始まりと終わりがあるが、しかし、始まりと終わりがなくてもいいような作品でもある。特に、冨井大裕や池内晶子の作品がその印象が強い。
また、どこまでも繰り返し続けて、そこに何らかの模様が半ば恣意的に半ば偶然に表出しただけという意味をより強く感じさせる作品もある。特に、関根直子や椛田ちひろや八木良太の作品がそんな印象。
羅列展示手法っていうのはここ10年ほどよく見られたけど、結果として、それでも表現しきれないという印象を残していたと私はとらえている。それに対して、上記のように消尽を作品化しているが故に、軽やかながらも、書き尽くそうとしている作品になっている。


はかれない

そう、現実は、計り知れない。とらえようとすれば、とらえようとするほど、とらえきれない多様な可能性が次々に現れてくる。その現実を前に、しかし、手をこまねいているだけではいられず、その現実を生きていかなければならないし、芸術はそれを何らかの形で表現することが一つの使命であるのだろう。そして、はかりきれないものがあることを理解しながらも、それを、”はかり方”というタイトルによって、あえて、明確に表現しているところが面白いし、また、それぞれの作品が混迷に寄ってではなくて、それをシンプルな形態で描いているところがとても特徴的だと感じた。


地味ながら

というところで、一見地味な展示にも感じたのだけれども、そこには、表面的な派手さに流されないで、芸術の意味の根源に、しかし、軽やかにアプローチしているこの展示は、非常にすばらしい展示であると感じた。
これらの作品をじっくりと味わっていただくことをおすすめいたします。

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東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
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