Space fo your Future 現代美術の幻の力



1.東京都現代美術館
東京都現代美術館にて2007年10月27日から始まった展示"Space fo your Future"に早速行ってみた。副題が、「アートとデザインの遺伝子を組み替える」であって、アート、デザイン、建築、ファッションなどなどのジャンルをクロスオーバーした展示。2008年1月4日まで。


2.意味がわからない事のすばらしさ
企画展示空間を全て使い切った上に、エントランスや地下の水場までも使用した大規模展示に、この展示に対する気合いを感じる。
そして、そこに展示される物は、正直言ってあまりにも私の理解を超えていた。いや、私自身が普段すごしている世界にある価値観とは全く違う次元の価値観を提示していた。解読出来そうで、しかし、解読とは全く違うレベルにあるようで。そして、ただ、そこには最終的にそこに表出しているその見た目の華やかさだけが、むしろ、あえて強調されているようでもあった。アートには、どこか背後に潜む意味合いを重視する場合もある。勿論、ここに展示されているものが表面だけで中身の無いものであるという事をいいたいのではなくて、様々な背景を持ちながらも、最終的には、あえてその表出したものを強調せしめてみせるその潔さというか、あえて、意味を追求させないながら、その表出によって圧倒的な印象を植え付けるという作品が多く見られて、そういった表現こそがもしかすると美術にしか出来ない表現なのかもしれないとそう感じたのである。
それは、この展示が単純に現代美術展ではなくて、”アート”と”デザイン”を提示した展示であるという事が、その展示から改めて強く印象づけられた。


3.異なる価値空間
この圧倒的な表現というのは、正直いってあまりにもすばらしすぎて、涙ぐみそうになるぐらいであった。特に、自身の普段の生活は力学などの物理現象を利用して機械的な物体を如何に動作させるのかを考えたり、如何に情報を蒐集して、それを如何に処理すれば、発見できる何かが在るのではないだろうかという事ばかりを考えているが故に、それとは全く異なるこの価値観の力というのは、あまりにも衝撃的だった。このブログの過去ログを見てもらえればわかるように、普段からしばしば美術展は訪れるのだけれども、これだけの衝撃を味わったのは久しぶり。多分現在の自分自身の心境とこの展示が見事に共振したという要素もあるのだと思うけれど。


4.現代美術に見る幻
そして、ふと思ったのは、それは”幻”ということ。いや、うまく説明できないのだけれども、美術にはどこか”幻”があるということ、いや、多くの物事には”幻”が存在しているのだという考え方もあるとそう思い至った。そこに表出されている物は、その多くは、”幻”でしかないと。隣の芝は青いというように、当事者にとっては、それを知りすぎているが故の、様々な負の部分の認識が在るのだけれども、それを外から見るとすばらしすぎる物に見えると、すなわちそれが"幻"だと。ただ、それは、"幻"にすぎないから、それよりも現実を見るべきだといいたいのではなくて、むしろ、その”幻”を肯定すべきではないのだろうかと、そこにある現実を理解し、そして、超越して。そして、現代美術は、"幻"を提示しているのではと。例え、現実があるとしても、それでもなお存在する”幻”であると。そして、その”幻”が、現実に対して圧倒的な力を有していると。いや、美術が現実ではなくて、"幻"といいたいのではなくて、その現実をも超える”幻”であり、力だと感じた。いや、やはりうまく説明できない。


5.とにかく
いずれにせよ、とてもいい展示だったと、そして、とても感動したというのが感想。しかも、結構な入りだったのが意外で(なんか、大々的なプロモーションでもしているのだろうか?)、若者が多くて、だけれども、若者だけではなくて、小さな子供をもつ家族連れだとか老夫婦だとかもいて、そんな雰囲気もまた良かった。
現代美術というと、どこか堅苦しさを感じる人もいるかもしれないけれど、この展示は、もっと軽い感じで見る事が出来るし、その意味のわから無さを超えて楽しむ事のできるとてもいい展示なので、是非とも訪れて欲しいというのが個人的な印象。
ちなみに、六本木森美術館にて開催の”六本木クロッシング”のチケットで値引きがある(逆もあり)。


関連リンク:
dLINKbRING.Art.東京都現代美術館
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