生誕100年 靉光展:東京国立近代美術館



1.石村日郎
これが、本名らしい、靉光の生誕百年回顧展が東京国立近代美術館にて開催中(〜2007/5/27)。


2.眼のある風景
最も有名な作品が”眼のある風景”。作家の名前を聞いた事がなくても、この作品を見た事はある人が多いと思う。荒野に置かれた大きな岩ともなんともとれるところに大きく描かれた目。一見しただけで、強く印象に残る作品。


3.独特の平面
上記の作品もそうなのだけれど、独特の光沢と暗さがあってエッジを感じる平面が強調された絵画という印象が強く残った。平板で立体感の無い絵であるという意味ではなくて、平面としての強さを感じるといえば良いだろうか。で、この画面特性が生まれた理由だろうところが、クレヨンやロウを溶かして描く作品を一時期作成していたというところ。回顧展なので、この手法の作品もいくつか展示されていて、これらが独特な味わいを持っていて、どこか暗鬱とした印象を受ける作品と不思議な明るさを感じさせる作品とがあるのだけれども、クレヨンやロウという画材の特性で、独特の強い平面感が出た作品になっている。この時の発見がその後の作品にも影響しているのだと思う。


4.シュールリアリズム・自然
全体的には、シュールリアリズムの影響を感じさせる作品もある一方で、終始一貫して登場するのが、植物、花、野菜、昆虫、動物といったモチーフ。個人的には、シュールリアリズム的な画風よりもこういったモチーフの作品がこの作家らしい作風なのだと感じた。これらは、自然の風景としてではなくて、それぞれが静物画として描かれているし、単体である場合もあれば、それぞれが不思議な組み合わせで画面を構成している作品もある。画風自体は、刻々と変化していくのだけれど、この静物画で扱うモチーフに変化がないというのは面白い。他の作家の回顧展でもこういった一貫性を感じるところがあるのだけれど、やはり人間って、なんとも説明の使いない愛着というか癖というかがあるのだというのをつくづく感じる。なぜ、それかは説明が困難で、だけれども、それなんだというのは、例え説明できなくても他人が否定すべきものではないと思う。こういう、説明の出来ない感覚はむしろ重要なのだと思う。そして、例えば、画家という形でこういって作品に反映しているということもまた貴重なことだと思う。


5.戦病死
結局戦争に行って、亡くなったそうだ。


6.リアルのためのフィクション
この個展と同時開催で、”リアルのためのフィクション”という展示も東京国立近代美術館では開催されている。イケムラレイコ、ソフィ・カル、やなぎみわ、塩田千春の4人の女性アーティストの作品。それぞれ、平面だけではなくて、様々なメディアを利用して表現をする作家。その表現も、現実の中に虚を作り出し、演じる事で作品とするタイプの芸術家。イメージとしては、掴みやすいという印象。よくそこを表現してくれたといいたくなるほどの作品ではない。


関連リンク:
dLINKbRING.Art.東京国立近代美術館
展覧会情報生誕100年 靉光展
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