英国の陰りと希望 Pineapple Thief の Tightly Unwound

Porcupine Tree 的な

なんとなく、そのバンド名が、Porcupine Tree に類似しているがために、私自身は、ちょっと、微妙なバンドではと勝手に思い込んでいたバンドが、Pineapple Thief。そのバンドの、2008年の作品で、7枚目のアルバムに当たる "Tightly Unwound" を聴いてみた。これが、思い込みの恐ろしさで、今まで聴いていなかったのが勿体ないぐらいのいい作品。

曲も

曲のほうも、Porcupine Tree の方向性に近い感じはあって、ある種のポップ的な要素もふくみながら、一方で、変拍子で展開したり、曲調を変化させるなどのズレを作っていく楽曲。ただ、方向性が類似しているだけであって、ただの亜種ではないのは、ちょっと聴いただけですぐに判断できる。
ちょっと脱力的に感情を入れて歌うボーカルを主体とした楽曲だけれども、演奏力を全面に出すバンドではない物の、演奏もしっかりしていて、変則的な楽曲が、何気ないアンサンブルで展開される。

暗さ

なんとなく、全体的に暗さを感じさせる雰囲気があるのだけれども、所々にアップテンポな曲を挟み込んでくるので、一辺倒に暗鬱になるわけではない。しかし、やはり、この暗さというか愁いというかが、このバンドの魅力だと思う。アコースティカルに展開される曲調が感情にしみこんでくる。たまたまだけれども、この寒い今の時期がなんとなくぴったりはまっているという気がする。

プログレ=ポスト

少し前に紹介した Lunatic Soul もそうなのだけれども（レーベルも同じKSCOPE）、こう、プログレというだけでも、かなり説明しにくい微妙な音楽なのだけれども、そこから、さらに、もう一つ微妙なジャンル、ポスト・ロックとのその間に位置するようなそんな楽曲という印象で、プログレ=ポストとでも呼びたくなるような感じ。ポストロックほど、既存のロックのノリのスタイルを破壊していないし、ごりごりのプログレというほど、テクニカルで仰々しいわけでもないし、だけれども、変拍子と変調を使いながら、一方で、どこかアンビエントで音響的な様子も見せたりするという。で、こういったタイプの音楽が、今の私の好みには、かなりぴったりきていて、個人的にはかなりお薦めなサウンドです。