あまりにも美しすぎるアイスランド Sigur Ros

Sigur Ros

アイスランド出身のミュージシャンというと、BjorkやBjorkが在籍していたSugercubesあたりが思い浮かぶけれども、アイスランド出身で陰ながらよく知られたバンドが今日ご紹介の Sigur Ros。1998年にアルバムデビュー。
このバンドは、ポストロックという呼ばれ方のすることが多くて、既存のロックの概念に現代音楽的な、もしくは、民族音楽的な概念が感じられるようなタイプの音楽をやっている。ポストロックというジャンルでいうと、このバンド以外では、Tortoise などがよく知られている。

映像作品

そのSigur Rosの映像作品 "Heima"。ライブ演奏を中心としたDVDだけれども、ライブDVDという形態ではなくて、ライブドキュメンタリとしての映像作品という形態。ライブ自体は、彼らの出身国であるアイスランドの各地で実施したフリーコンサートの様子にメンバーのインタビューや地元の街や自然の映像、観客の映像などをちりばめたもの。2枚組みで、1枚目がインタビューを中心としたドキュメンタリーで、2枚目が完成された作品。

初物

と、いろいろと説明を書きながらも、Sigur Ros の作品をじっくりと鑑賞するのは、CDも含めてこれが、私にとっては初めて。なので、音楽のタイプの印象から。
音楽は、とても精神的な印象。基本は、アコースティック楽器（ストリングスやメタロフォン、ブラス含む）による、非常に穏やかな曲調の音楽をベースに高音ボーカルを搾り出すように歌うスタイル（ただし、このアコースティック感は、このDVDのみなのかもしれない）。全体的に感情をむき出しにするという状態の正反対の表現方法なのだけれども、それが穏やかというよりは、内に秘めた感情をこらえているような印象で、これが感情に強く迫ってくる。また、曲によっては、曲が先に進めば進むほど徐々に感情がむき出しになって攻撃性を増していくようなものもありで、これもまたととても強い印象を残す。曲自体の構成も一聴では、とてもシンプルに聞こえるのだけれども、リズムがないように思われる曲だったり、思いのほか複雑な構成をもっていたりする。全体的には、とても遅いリズムを多用するので、結構演奏も前のめりにならないようにするのが難しそう。そして、そのスローなリズムによって聴いている側は完全に包み込まれる。アイスランドの民族音楽がどのようなものかは知らないのだけれども、民族音楽的な印象もする。

美しすぎる

そして、このDVDなのだけれども、これはあまりにも美しすぎる。曲とそれから、アイスランドの自然の光景、人々の様子などがうまくなじんでいて、曲の印象をより強めている。そこには、あまりにも美しすぎる自然と人々と、だけれども、そこに潜む暗い感情の部分が見え隠れして、だけれども、その暗い感情を押し殺して進んでいこうとするかのようなそんな印象を、私は勝手に感じ取ってみた。ちょっと美しすぎて、涙がこぼれそうなほどというのが、大げさではないぐらいにかなり感動しできる作品に仕上がっている。
そして、彼らの作り出す音楽のその絶大な感情表現に感銘を受けずに入られない。

信念

しかし、こういったそれまでにはない表現手法によって構築したロックによって見事に表現する Sigur Ros というバンドのすごさは尋常ではないと思う。そこにある彼らの信念というのか、表現に対する強い意識というのか、その姿勢にも感銘を受けないではいられない。そして、このとても感情的な音楽を聴くと音楽の持つ精神的な部分を再度思考してみる。