ルポ最底辺



1.日雇い
近頃、話題になっているネットカフェ難民だとか、派遣労働、日雇い派遣などなどの労働格差を切り口に、その原風景ともいえる釜ヶ崎での日雇い労働および野宿の実態についての著者の体験をふまえたルポルタージュ。また、その釜ヶ崎ルポの延長線上の議論として、再び現在起こっている派遣社員と正規社員の格差に伴う将来の危険性についての問題提議が為された作品が、”ルポ最底辺”(ちくま書店)である。


2.なかなか難しい議論
まず、一般的に考えて、ホームレスやネットカフェ難民といった議論には、若干難しいところがあると思う。けれども、ちょっと、考えただけでも相矛盾した物事がいろいろと頭に浮かんでくる。結果として、どの選択肢が正しいのかという結論を導き出すのが困難になる。行政によるある程度の保護は必要だとは思う、企業側の責任もあるだろう、ただ、それぞれにもそれぞれの言い訳はあると思う、行政にしても、執行者と意志決定者が異なるということもあろうし、フリーライダーを排除することを重視する傾向もあるように思う。企業側の理論としては、経営者の私腹を肥やすは論外としても、国際競争という環境下で労働環境と経営はバランスを取らなければ、というのもあるだろう。


3.0にはならない
それから、多分いくらいい福祉制度が出来たとしても、やはり、ホームレスという存在は無くならないような気がする。だからといって現状を肯定する気は無いのだけれども。ただ、ある程度はボランティアなどなどの民間セーフティーネットで支えるしかないところはあるような気がする。じゃぁ、それを誰がやるのだといわれると、答える事ができないのだけれども。


4.そしてますます
で、現時点でも若者の就労格差が言われているのだけれども、この傾向は解消されるどころかますます広がっていくような気がする。雇用制度が能力主義側にシフトしているのもそうだけれども、デジタル社会、情報化社会はとかく脳に依存する傾向が強いような気がして、ますます数少ない勝者を生み出す傾向にあるような気がする。特に、これといったバックデータがあって行っているわけではないけれども、なんとなくそう思う。


5.どうする?
多分、格差の問題って若干客観的な視点から見ると、是正すべきと強く思う側になるのだけれども、例えば、いざ目前に正社員の席があって、その席を就職試験の場であらそうとなれば、自分がその席を取ることを目指して、そして、他の人が席を取れなかったときにどうなるかなんて考えないだろう。そして、さらにこの現状を変化させる権限は、政治家や企業経営者にあって、我々自身にはないという側面はある。勿論、労働争議なり組合というところもあるだろうけれど、それもまた難しい。


6.そのあたりもまた
結局、こういった問題を難しくしているのは、それぞれの立場でそれぞれの振る舞い方があって、そして、時に利害がそこで対立してしまう。そのことによって、一枚岩としての主張が為されなくなる。
となると、結局言論は重要視されにくくなって、問題は問題のまま先送りになるということになるのだろう。
どうすべきなのか、とても難しい問題である。

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