森村泰昌「美の教室、静聴せよ」 : 横浜美術館



1.横浜
横浜は、ここ数年美術関連にはかなり力を入れている事もあって、アート施設なり、アートイベントなりが結構充実した街になりつつある。そんな横浜美術の中核施設の1つが、横浜美術館。思うほど開発が進んでいないみなとみらい地区の広々感が逆に功を奏している感じのする平面にぽつんと建つちょっとバブリーな建物。みなとみらい駅には近い物の商業施設からは少し遠いというところが、いいような悪いような。


2.夏休み
そんな横浜美術館で現在開催中なのが、現代美術家森村泰昌の展示で〜2007/9/17。横浜美術館自体が市民への美術の浸透を図ろうとしているというところと、さらに夏休みで子供達を美術館へ導こう、そして、美術に対する理解を深めてもらおうという意図が相まって、「美の教室」という授業めいた構成になっている。
ホームルームから始まって、一時限目・・・放課後まで。イヤホンを渡されて、それぞれの展示でわざわざ解説を聴く。


3.子供達
確かに、子供達が多い。宿題の課題として与えられているのもあるのだろうか、やたらにメモっている。ある意味ではうらやましい光景かもしれない。美術館で云々というのは、特に現代美術に対してどうのこうのなんて、私の小学校時代には考えられもしなかったこと。そういえば、昔美術の時間に曲線で形状を引いてみると面白い形になったから、そのまま提出使用としたら、怒られた記憶がある。むかしから、自分は曲線好きだったみたい、そして、いまだに。何か深層心理的意味があるのかもしれないが、そんなことはどうでも良くて、ただ個人には離れられない何らかの形状があるのだと。いや、話がそれた。とにかく、こういった物に普通に触れる事が出来るというのは結構うらやましい小学生生活。


4.展示
展示はそんな感じで、解説を主体に置いているところもあるので、コアな美術鑑賞には向かない。展示内容は、森村さんの良くやっている過去の名画に自らなりきって、再現することで、その再現の過程に現れる2次元と3次元の矛盾だとか物理的制約の解消から生じてくる違和感に絵画の意志をみるというタイプの作品や、さらにその模倣を展開していくという作品。


5.模倣
この模倣に感じるのは、模倣の持つある種の説得力。模倣となるには、そのベースには既に価値が確定されているものが存在する。それは、もはや否定が困難なほどに社会に認知されているそれ、もしくは、その現存性が既に否定困難な状態になっているそれ。それを模倣すると言うところに、まずその否定する事の出来ないものをベースに置くという操作が入る。そこの上に構築される物は、たしかに、冒涜として批判されるかもしれないものなのだけれども、一方ではそのベースの価値は否定困難であるという矛盾が作品の中に既に内包されている。ただ、それはある意味では作品内矛盾という外に出る事のない自己完結に陥る危険性もあるのだけれども、そこに、ある種の諧謔を加える事で、作品として外に開いた物に仕上げているという印象がする。ただ、その諧謔の必然性は、もしくは、作者の意志はどこを向くのかというのは、とても難しくて、私自身理解仕切れないと感じる作品もあった。何故その作品がそう展開されたのかというところの必然性と意志という意味。


6.常設展
ついでに常設展をみてみる。こちらも結構コレクションを持っているという印象で、しかも、なかなか満遍なく作品を持っている感じがする。ちょうどシュールリアリズム関連の写真展示があったが、マン・レイの作品のポートレイトシリーズは見る価値が高いと思う。それから、デルヴォーの版画は私は初めてみたので結構意外で面白かった。版画であることもあって、大判油絵ののっぺりとした印象とは少し違う様子が興味深い。


7.お子様連れで
そんなことで、いろいろと配慮されているので、コアな美術鑑賞というよりはかなり気軽な美術鑑賞として行く事をお勧めしたい展示。


関連リンク:
横浜美術館 YOKOHAMA MUSEUM OF ART
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美の教室、静聴せよ
発売元 : 理論社
発売日 : 2007-07 (単行本)
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