ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語−夢の楽園 : 原美術館 -番外編-



1.美術手帳
先日、ヘンリー・ダーガー展についてをエントリーしたけれど、美術手帳も5月号は、ヘンリー・ダーガーが特集されていて、その中のやなぎみわさんの記事がとても私にとっては的を射たという感じのする内容だったので、そこにすこし触れながら、ヘンリー・ダガー展の感想をもう少し。


2.箱男
その作品というよりも、ヘンリー・ダーガーの生活について。上記の雑誌の中でやなぎみわ氏も安部公房の箱男について少し触れているのだけれど、ヘンリー・ダーガーの部屋の様子についての記述を読むと箱男の箱の内側の落書きを思い浮かべずにはいられないと、私もなんとなく感じていて、やなぎみわ氏の記事を読んだときにその感覚が確信に変わった。
そして、安部公房の書いた虚構が虚構でありながらとても現実的であるというのは、つまり人の中にはどこかそういった他者とは隔絶した自己の世界があって、それが社会との違和感になりえてだけれどもそれを否定も肯定も出来ないと。ヘンリー・ダーガーとのつながりでいうと、ヘンリー・ダーガーの部屋が箱男の壁の内側のようであるとすればヘンリー・ダーガー箱男的であるという側面もあると、そして、確かにそれは一般的ではないという意味での異常な世界だけれども、そこに対する憧れというか同意というかそういう感覚が鑑賞者側のどこかにあるが故に、惹きつけられてしまうところがある。と解釈してみたわけです。箱男ヘンリー・ダーガーの接続が絵画と文学を通した芸術というインターフェイスで繋がっている感じがするところがとても興味深いというところ。


3.カフカ
それから、フランツ・カフカについての言及もやなぎみわ氏はしていて、それは、ヘンリー・ダーガーカフカの自身の作品に対する姿勢。ヘンリー・ダーガーは自ら外部へ発表することは無かった一方でカフカは自ら発表しようとしていたという差異はあるとはいえ、自分の作品を破棄してくれと他者へ作品を委ねたという態度。ここに、同一なものをみるか差異を見るかで感じ方は異なるとは思うが、一生涯ほとんど発表する機会もないままに、だけれども作品を作り続け、そして、それを自らは破棄しなかったというところには何か同一な精神を感じずにはいられない。
もう一つ、別の視点をここに加えるとするならば、ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独の中で、アウレリャノ・ブエンディア大佐も似たような態度をとっている。ついでにいうと、やなぎみわ氏の作品にはガブリエル・ガルシア=マルケスの作品に言及した作品がある。


4.作品そのものではない感想
ちょっと、私のこのエントリーが、作品そのものからは離れた言及になっているところが適切なのかどうかという疑念を自分でも感じながら、になってしまうけれど、どうしても、ヘンリー・ダーガーの作品を見ると作品だけではなくて作者についても興味を抱かずにはいられない。というのは、やはり、のぞき見根性という自分自身の視点を捨てきれないからなのかもしれない。


5.私が言うのも何ですが
ついでに、私のような人間が言うのも何ですが、美術手帳も5月号のやなぎみわさんの記事は文章も視点をとても面白くて鋭い。たまにしかお目にかかれないすばらしい記事の一つだと思う、あくまで私のわがままな私見ではありますが。


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