アート・オブ・プロジェクトマネジメント : Scott Berkun



1.オライリー
さて、オライリーのビジネス書で、元Microsoftプロマネをやっていた人物の書いた、プロジェクトマネジメント本。結構厚手で、読むのに時間がかかったりもするが、なかなか面白いし、参考になる。


2.人間
何よりもまず、とても人間的な内容。というと変な感じだけれど、プログラマが書いたじゃなくて、プロマネが書いたというところが重要で、システマティックに物事を分析するというよりも、人間の行動原理だとか、感覚に注目して、如何に人を動かすか、そして、自分が動くかというところに重きを置いているのがこの本の良いところだと思う。


3.システム
で、ここで紹介されている多くの手法にしても、ややこしいシステムを用いるだのという事は、むしろ否定していて、シンプルでわかりやすいシステムを利用して、人と折衝し、全体のプロジェクト管理をするべきだという論点が多い。これは、結構納得で、システムを作って利用しようとしても、なかなかうまくいかない場合が多い。勿論、システムを完全に否定するつもりはなくて、というか、むしろシステムを活用すべきだと私も考えてはいるが、少なくとも、既存のシステムではうまくいかない場合が多い。


4.アンビエント
とはいいつつも、プロジェクトに関して、いくつかのフェーズに分けてさらに役割の分担を作り、重要度分類を作り、スケジュールを作り、という大枠という意味では、システム作りを推奨している(この本の中ではそれをシステムとは呼んではいないし、呼ぶべきかどうかという議論もあるが、ここではそれもシステムと呼ぶ)。確かに、ある程度の分類は必要で、一方で、分類を詳細にしすぎるとその分類をすることに時間をとられるという事態に陥り、本末転倒になる場合が多々ある。そんなことをつらつらと考えていると、やはり、アンビエントなシステムというのか、システムが存在するのだけれど、その存在を強く意識しなくても、そのシステムを運用できるという状態が最も理想的ではないかと思うわけです。
4.1階層別よりもタグ付け
というところでいうと、例えば、階層で分類されているよりもそれぞれにタグがついている方が便利だと思う場合は多々あって、前者を運用しようとすると例えば、階層の名前の付け方のルールや運用のルールが厳格にならざるを得ない。一方で、後者はそれほど厳格にする必要がない。となると、運用上楽なのは後者で、そのシステムを気にする事なく、そのシステムを活用できる事になる。当然、管理をあまりにも適当にやると役に立たないシステムになるという危険性もあるけれど。
4.2ディレクトリより検索
となると、ディレクトリ型より検索型のほうが便利ではという議論にも繋がる。もしくは、Microformatの考え方なんかは、アンビエントなシステムという考え方に近いと思う。最低限のルールだけは作るという意味で。
4.3時と場合によるものの
勿論、そのシステムが何を管理するのかによって、厳格なルールが必要なのか、運用が簡単な方がいいのかは分かれるけれど、法律などが絡まない、比較的身内といえるものの運用に関しては、大雑把な管理手法が役に立つような気がする。
4.4しかし、それが難しい
この適切ないい加減さを持ったアンビエントなシステムというのが意外と難しい。例えば、種々のフォーマットのファイル管理をしたいと考えた場合、最近多くの会社がデータベースと連動させたシステムを作っているけれど、そのどれもが、高価で肥大化したシステムになっていて、もう一つ活用できないなと感じる場合が多い。仕事のフットワークを上げたいのにシステムの運用がむしろボトルネックとなりそうな感じで、使えないといつも思ってしまう。
4.5だからHACK
だから、結局はHACKするしかないのかもしれない。というか、HACK出来る余地を十分にもつシステムじゃないと役に立たないのかもしれない。誰もが平等に使えるという考え方に過ちがあって、うまく使いこなす人はどんどん使えというシステムであるべきかもしれない。そして、アンビエントなものをアンビエントながらも勝手にいろいろな事をやってくれるシステムとして運用出来る人間が勝ると、それは、昔から変わらぬことかもしれない、媒体が変化するだけで。例えば、そういう意味ではXMLでつなぐってのは、結構理想に近いかもしれない。最低限のルールの下にデータを配信する。データを扱う側が工夫すれば様々な事が出来る。


5.話がそれましたが
とちょっと別の方向に流れてしまったけれど、特にマネジメント側に比較的近い立場で仕事をした事のある人なら、結構その通りと思う事が多いのではないかと感じる内容が多い本。そういう壁があるのだと知るだけでもこの本を読む価値があるように思う。そして、人間が充満している人間社会と自分自身を再認識して、そして、物事を地味ながらも何とか転がして、ある完了に導きこむ困難に挫けないようにするための活力剤としてこの本を読むと良いのではないかと思ったりします。


6.ちなみに他業種でも
ちなみに、コンピュータ業界特有の言葉もそれなりに出てくる書物だけれども、プロマネという意味では、コンピュータ業界ではなくても参考になる内容です。


関連リンク:
www.oreilly.co.jp -- オライリー・ジャパン
Powered BY AmazoRogi

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法
発売日 : 2006-09-07 (単行本(ソフトカバー))
売上ランク : 4666 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 3,360 通常24時間以内に発送
評価平均 : /1人
手元に置いておいて、ときどき読み解く1冊
Powered BY AmazoRogi Data as of 2007-03-27
See detail & latest visit AMAZON.co.jp