マシュー・バーニー:クレマスター・フィルム・サイクル

1.はじめに
朝、遅すぎ起床、まだ間に合うものの。
マシュー・バーニーのクレマスターシリーズ全作一気に大公開。完売。比較的若い客層。中心となるもっとも最近でかつもっとも長い作品Cremaster3だけは、1週間にわたっての公開だが、1,2,4,5を含む公開は、渋谷のミニシアターアミューズCQNにて二日のみ(大阪でも開催予定があるようだが・・2006/7/16 大阪市鶴見区民センター(詳しくは、シネ・ヌーヴォ))。曇り空。少しずつ人が増え始めている渋谷の休日。少しだけの時間の余裕を持って到着。


2.はじまり
これから約8時間わたる違う意味のロングラン公演。しかも、全体的な内容につながりのない、映像芸術、イメージに次ぐイメージ、どうしても睡魔と戦わなければならい。一方で、意味も分からないままに映像の印象だけが焼き付いていく。全ての作品に共通するのは、常に複数の情景が入れ替わり表示されていくところ。そこにあるような無いようなつながりを感じようとして、そして、あまり感じきれないでもありながら。そして、多くの映像が、生理的に印象に焼き付けられるようなもの。そして、過剰な装飾、コスチューム、音楽。無意味であるかのような作業の継続。そして、エンブレム。


3.紹介
きっと不明であろう、マシュー・バーニーを知らない人がここまで読んでみても一体何のことやら。そして、きって、知っている人であっても一体何のことやら、知っている人にとっては、きっと、マシュー・バーニーの作為自体が一体何のことや。しかし、一方で無視することは出来ず、かといって、本当に好きなんだと断言できるだろうか。どちらかというと、見ると脳のどこかに引っかかったまま離れていかないというところが彼の作品に対する印象である。そして、またこのように彼の作品に触れることが出来る機会はきわめて少ないので、体感することもなかなか出来ない。だから、貴重な機会だからと体感してみるということにもなるのかもしれない。


4.続き
エンブレムそのものがそうなのだろうが、対称性(対照性)が全体のテーマとして感じられもする。それは、複数の交錯する映像そのものもそうだし、様々な部分に現れるセットや装飾、コスチューム、音楽、さらには登場人物の様子についても。そして、それらの対称性だけがそこにはあって、それら自体の何らかの意味というのは不明なままという状況ではないだろうか。宇宙に浮かぶ星のようにというと、何となくかっこいい例えのようで、完全にイメージだけによる不適切な例えのようで。そう、ただ、それぞれの両極が現れることによるバランスだけがあって、それとも、シーソーのようにと言うべきだろうか。いや、これもまた違う。


5.圧巻
そして、圧巻はCremaster3。土の中から、高層タワーの頂上へと向かう。そして、後半の大パーティー。階層を移動しながら、あちらこちらから、様々な要素が表示されていって。(たぶん今回DVDとして発売になるのはこの部分なのだと思う。)軽くほほえむべきなのか、苦笑すべきなのか、目を背けるべきなのか、じっと見入るべきなのか、純粋に楽しむべきなのか、その裏に隠されている何かを探るべきなのか。一体何故この場面に移動したのだろうか。誰かの想像の中なのか、それとも、壮大な隠喩なのか。


6.最終章
Cremaster5は何となく涙を誘うような気さえする。壮大な楽曲。まさに終わりへと向かうのか。橋の上から、舞台の上から、プールの中へ、川の中へ。


7.過剰
全編にわたってあまりにも過剰だ。映像、コスチューム、音楽。そして、それらはあまりも不明でありながら、あまりにも明確で。理屈を持ち出そうとするその感情を一掃してしまい、感覚でとらえるしか、いやそれどころか、とりあえず感覚に焼き付けるしか、もしくは、焼き付けられるしか、ない。


関連リンク:
Drawing Restraint
Cremaster Cycle
関連サーチ:
Matthew Barney(Google)
Matthew Barney(del.icio.us)
Matthew Barney(Technorati.com)
Matthew Barney(Wikipedia(EN))
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