六本木森美術館にて「アラブ・エクスプレス展」を見た



アラブ・エクスプレス展

さてさて、六本木森美術館です。現在開催中の展示は、アラブの現代美術を集めた展示で、「アラブ・エクスプレス展」と題されたそれ。現代美術を地域性でまとめるような展示は、一つの王道で、しばしば印象深い展示になることが多い。
ということで、期待を込めて見に行ってきました。


宗教だとか戦争だとか石油だとか

アラブという言葉からは、少なくとも私は、どうしても、宗教的な背景であるとか、紛争・もしくは独裁といったあたりのことが最初のイメージとして出てきてしまう。一方で、もう一つのイメージとしては、石油とそれに付随した巨額の富と発展という側面もイメージしないではいられない。
そのあたりの現実と美術がどう絡まり合っているのかという視点を捨てきれぬまま、私は展示会場へと足を踏み入れたのでした。


のっぺりとした表面

展示全体をとおしての感覚としては、上記のような重いはよそに、表面的には非常にのっぺりとした印象。見た瞬間に衝撃をうけるような、もしくは目を奪われるような作品は無いと言っていい。ある意味では穏やかであるし、ある意味では、過激な主張が抑えられてでもいるかのようでもある。正直に言えば、上記のようなイメージを持って鑑賞し始めた私にとっては、おおいなる肩すかしの印象。


説明文に隠された

展示作品そのものは、そのように刺激的ではない。ただ、この展示で見逃せないのは、作品のよこに書かれている説明文。普段は、あまり読まないようにしているのだけれども、今回は、どうにも作品のみでは感情にぐっと来るものがなかったので、結構解説を見て回った。
すると、それを読むとなるほどと思わされる展示がおおいことに気づいたわけです。例えば、何もないような街の風景が実は過去に処刑場であった場所であるとか、そんな感じ。


どうなのか

これが、どうも、どうなのだろうかと思わずにはいられないところ。これは、やはり文化的な背景の違いがある故にやむを得ない事実なのだろうか?それとも、やはり本来的には作品そのものが何かを訴えているべきであってというところなのだろうか?しかし、特に現代美術は往々にして説明が必要な場合が多く、現在では、解説用イヤホンが貸し出されている例が多いのもまた一つの事実でもある。


ぐっとこない

しかし、解説を読んでなるほどと思った後ですら、どうにもぐっと来ない。説明分以上のものが感じられないのであれば、説明分だけで十分であって、作品は必要ないのではないのではないだろうかと思ってしまったり。
この、作品がぐっとこない感じは一体何なのだろうか?やはり、私にとっては、あまりにも異世界の事象であって、当事者にはなりきれない私がそこにあると言うことなのだろうか?


その悲劇

そして、結局のところ、むしろ、ドキュメンタリー的なところのみが印象として残ってしまう。パレスチナイスラエルの過去の遍歴だとか、ベイルートの悲劇だとか。


しかし

しかし、どうなのだろうか。確かに、あまりにも現実が過酷すぎれば、表現というのは、その現実を超えることが出来ないものなのかもしれない。ただ、しかし、美術は、それをもっと違う角度から、鋭角に捉えなおし、そのことによって、新たな展開を導くような力を持っているものではないのだろうか?どうにも、そのあたりの感覚を私は受け取りきることが出来なかった。
矛盾を晒すのはそれほど難しいことではないだろう。むしろ、その矛盾をどのような英知で理解していくのかと言うことが重要であり、美術の一つの役割ではないのかと思うのだが、しかし、どうもそこまでは感じられなかった。


しょうがない

しかし、それはしょうがないのかもしれない。いや、むしろ私の感性の鋭さのほうに危機があって、うまく感じ取れなかったのかもしれない。それはそれで、また、現実でもある。この環境の中にいることによって、我々の感覚もまた、ある方向性を持ってしまっているのも事実なのだから。
いや、違う意味で考えさせられる展示でした。


関連リンク:
アラブ・エクスプレス展:アラブ美術の今を知る | 森美術館
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