The ENID 完全復活!ライブDVDは見る価値ありありです



The ENID

さて、英国の秘宝中の秘宝バンド、The ENID。長らくの活動休止状態から復活して、CDのリリースの他、ライブを実施するなど、精力的な活動を続ける彼らですが、そんな彼らの最新の姿をおさめたライブDVDがリリースされた。The Enid At Town Hall Birmingham と題されたそのDVDは、新作アルバム Journey's End の曲を再現すると同時に、彼らの代表作をいくつか演奏している姿を映し出している。
ちなみに、この作品は、彼らのサイトにて販売していますが、Garden Shed などのプログレ系輸入盤屋さんでも売っているのを見かけます。
(以下の映像は、Nearfest2010からで、ここで紹介するDVDには入っていません。)



リズム

この作品、最初は、現在の The ENID 5人による演奏で始まる。
多重コーラスと Jason Ducker のギターをフィーチャーした後期 ENID 的なダンサブルな印象の最初の曲から The ENID がライブバンドとしても完全に復活していることを印象づけられる。
そして、ギーボード群によるオーケストレーションに加えて、The ENID サウンドを特徴付ける楽器が、ティンパニーではないかと思っているのだけれども、それに続く新作からの楽曲は、ベーシストが叩くティンパニーによるリズムが、ロックドラムによるものとは趣を異にするリズムを作りあげて、ここに展開されていくサウンドの ENID らしさをさらに深めている。そう、このリズムの使い方の多様性も ENID サウンドの面白いところで、あえてダンサブルな機械的なリズムを使うところもあれば、ロック的に迫るところ、そして、ティンパニーによるクラシック的なリズム使いと、それは、このDVDでも各種味わえる。


In the Region of the Summer Stars

そして、作りあげられる重厚なサウンドは、これは、近年のテクノロジーによるところもあるのだろうけれども、5人だけで作りあげられているとはとても思えないほどの代物。特に、あの名曲、In the Region of the Summer Stars のそのすばらしさは、ベースの楽曲のすばらしさも相まって、本当にこれ、生で聴いてみたいと思うほどのそれ。前半から徐々に盛り上がっていき、そして、後半には色鮮やかなメロディーが広がるという展開。この曲とこの演奏は絶品です。


登場

ここまででも、新曲と、そしてかつての名曲を十分に堪能出来て大興奮なのだけれども、この後に、ちょっとしたブレイクの後、さらなる驚きの始まり。
あの、Francis Lickerish が登場。さらに、加えて、オーケストラのブラスセクション、パイプオルガン奏者が加わってさらなる壮大な演奏が始まる。
まずは、Childe Roland。2枚看板になったギターが鋭角鋭く切れ込み、ブラスセクションにより増強されたオーケストレーションが重厚に盛り上げる。これは、もう最高ですよ。
そして、Francis Lickerish はリュートに楽器を持ち替え、Robert John Godfrey がグランドピアノに移動して Ondine の始まり。リュートとピアノによる室内楽的な静かな展開から始まるそれは、ギターがからまりながら、美しい世界を描いていく。このあたりで、もう悶絶するほどの感動に包まれているのだけれども、それだけでは終わらない。


美しき

続いては、The ENID の短尺作品としては、最も美しい楽曲と言っていいだろう、 The Lovers が、グランドピアノにいる Robert John Godfrey によって紡ぎ出されていく。このDVDではピアノソロにて展開されるその曲は、今も色あせることなく、美しく響き渡る。もしも、私がピアノを弾けたなら、最も弾いてきたい曲です、これ。ちょっと感極まってしまうほどの美しさ。絶品中の絶品です。


FAND

そして、さらに、メンバーが加わった後に、Francis Lickerish によるちょっと長すぎるお話が終わると、くるんです、The ENID といえば、この曲、FAND。いかにもな雰囲気のあるオーケストレーションから始まって、4本になったギターがスクランブルしながら、オーケストラ側にも加わったティンパニーに煽られながら、曲が展開していくわけです。時に、繊細に、時に、美しく、時に重厚に、時に壮大に、時に激しく。まさにシンフォニックロックの最高峰の演奏。若干合わせ辛そうなところも有永らだけれども、やはりすばらしいものはすばらしいですよ。


エンディング

で、そこで壮大に終わった後には、また演奏メンバーが少なくなって、今度は、マシンリズムに乗せたダンサブルなリズムにクラシカルなサウンドがのる、不思議な楽曲 Dark Hydraulic で締めくくるわけです。そう、先述のように、ティンパニーによるリズムとは全くことなるリズムを持つ楽曲が入り込んできて、しかし、これもまた、The ENID なんですよね。こういうタイプの曲は、賛否両論なところもあるのかもしれないけれども、私は結構好きです。


復活祭

ということで、この DVD に収録されたステージは、とりわけ、The ENID 復活祭とでも言いたくなるようなそれ。豪勢なメンバー構成で展開されるこの壮大なサウンドは、まさに、The ENID ここにありという感じ。この、DVDは見ないのは、勿体ない。しかも、ちゃんと、5.1chな音も入っていますし。しかし、これ、生で見たかったデスよ、本当に。
というか、今の The ENID はライブやる気満々っぽいので、これは、クラブチッタさん是非とも呼んでくださいという感じ。チケット1万超えでも必ずや行きますので、出来れば、オケ入りで。


悦び

ということで、ここまですばらしい復活劇を目撃できるとは、夢にも思わなかった The ENID のその姿を堪能出来るこのDVDは本当にいいです。ちょっと、我が家に来たタイミングが微妙だったので、2010年のベストライブDVDに入れることが出来なかったのですが、これは本当にいいです。いや、私のこのバンドへの思い入れが強すぎるせいもあるのですが、しかし、すばらしい。絶賛。