キャピタリズムを見てみた



Michael Moore

痛烈な批判に満ちたドキュメンタリー映画を撮るアメリカの映画監督で、今や十分すぎるほど知られた存在のマイケル・ムーア監督。その最新作「キャピタリズム」を見てみた。


メジャー

さすが、監督が来日したりもしてよく知られている映画なだけあって、なかなかの盛況ぶりなお客さんの入り。普段、メジャーな映画に行き慣れていない私にとってはちょっと窮屈。特に、中年齢のお客様が多くて、しかも、隣にお座りに慣れれた中年齢女性のお客様の香水が何ともかぐわしくて、映画の間中苦しかったという苦い経験。しかも、最初はその席あいていたのに、映画が始まるとわざわざその方が移動してきたという。混雑の中空間のゆとりのある場所におさまることが出来て幸運を感じていた後の出来事だっただけにちょっと憤慨。


それはさておき

それはさておき、映画のほう。そのタイトル通りに、キャピタリズム、つまり、資本主義を批判するドキュメンタリー映画。勿論、その批判の対称は、リーマン・ショックを巻き起こしたウォール街に向かう。
ただ、この映画の一つの重要な視点は、昨年に明確に表出した金融危機をその前後のみに言及するのではなくて、第二次大戦あたりから脈々と繋がる金融資本主義としてとらえ批判しているところ。それは、同時に単純な過剰資本主義だけではなくて、政治と金融業界が密接に連携をとることで成し遂げられた者であり、同時にプロパガンダとしてのアメリカン・ドリームを口実に一般的な支持を受ける手法として確立されたという指摘だと思う。


しかし

しかし、金融危機が露呈させたのは、富が一部の富裕層へのみ流れ込むシステムがそこにできあがっていたという事実。そして、結果として、一般生活者は、職を失い、場合によっては、家を失い。そして、さらにその家を再び投資の対象にして儲ける輩もいるというその現実。
一方で、金融業界は公的資金で立ち直り、そして、ある街は廃墟になっていく。


変化

そんな現実を描きながら、希望をそこに提示することも忘れてはいない作品で、終盤にさしかかると、その現実に対してデモなどの抗議をする人々の登場。オバマが大統領になったということ。そして、CEOなどの経営幹部が大きな給料を取るのではなくて、誰もが平等に給料を貰い発言権を持つ会社の存在の紹介などなど。それとともに、敗戦国である日独伊の持つ憲法の米国憲法に対する正当性の指摘もある。
資本主義をすてさって、民主主義へと。


疑問

というところが、映画のおおよその中身だと思う。確かに、感情的には分かる。一部が大金を手にして、大多数が困難に落ちるということは。もしくは、何故常に苦しむのは貧困者なのかと。しかし、少なくとも言えるのはこの映画の終盤に提示される希望は、おそらく希望ではないということ。現実はそうは行かないのではないかと。平和を望んでも戦争を仕掛ける人々が言れば、戦うしかない時がある。同様に、平穏無事に労働して給料を受けて平穏な生活をしようとしても、常にそこには競争者が現れる。特に、後者は前者ほど人々を躊躇させない。それに、競争をなくすことは自己否定的でもある。それが可能だろうか本当に。


自己防衛

生きていくための自己防衛の方法はいくつかある。今の現状を維持するために、今持っている権利を最大限主張して居座る方法。それとは別に、自らを変化させながら、社会の変化に適応して、敗北者にならないように努力する方法。なにがどうあっても、前者であることは難しいので花井のか?GMの再建を困難にさせたのは?JALの再建を困難にしているのは、前者ではないのか。勿論、その帰結としてこの映画にも描かれているような超低賃金のアメリカのパイロットのような事例は行きすぎではあるけれども。誰かが見方であるということはないし、集団を形成して主張し何かを勝ち得たとたんに、負け組から勝ち組に変わり、搾取される側から搾取する側に回るという矛盾が、そこには常にある。そして、勝ち組なったとたんに、そこにはフリーライダーが生まれる。際限のない要求をし始める。年金が失われたと大騒ぎするが、膨張した金融市場に膨大な金銭を投じたの一つの勢力は年金ではないか。現役世代よりも贅沢をしようとしたのは誰か?


個人主義

アメリカは個人主義の国家だとよく言われる。医療制度の改正においても、端から見るとオバマの真っ当な主張に見えても、賛否両論になる国。
その国から生まれたこの映画の主張は、とても不思議だけれども、一方でこの感情的な様子はアメリカらしいようにも感じる。


社会契約説

私は、社会契約説を強く信じている。そこにしか、解決はないとも思っている。しかし、これには何にも強制力はない。誰もがそれを意識するという自発性のものでしかない。これは、資本主義でも、民主主義でも、社会主義でもその根幹としてもつことが出来る考え方であると思っている。確かに、自由は保障されている、しかし、自由に振る舞いすぎると自由が阻害される。そして、残念ながらビルトインスタビライザーの効き目は十分ではない。社会契約説の考え方を強く主張し広め、信仰的に人々の感覚にすり込むしかないとも思う。強制力として唯一可能性があるのは、法律のレベルにまで持って行くことぐらい。だが、元来近代国家であれば、その法律は社会契約説に則っているはずであるのだから、これ以上可能なのだろうかとも思うが。


続く

それは、人類であるから、きっと続くのだと思う。確かに、戦争という個のエゴによる強奪は、悲劇によってある程度に落ち着いている。しかし、この資本主義の闘争は、それはそれでまだまだ続くだろう。それどころか、これからが本番かもしれない。それは、二回の大戦のような悲劇へと向かうのか。確かに、その要素はある。大戦時に植民地化で向かった地、アジアやアフリカへ、今は資本が向かっている。その地の様々な資源が争奪戦の中にある。どのように制御し、どのように生き残るのか。この人類の課題に対しては、例えば、この映画はその事に対する考察の先鞭にはなるかもしれない。




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