バンコのアルバム紹介4回目は、美しきイタリアンポップ

1983年

イタリアン・ロックバンド、Banco Del Mutuo Soccorsoのアルバム紹介の第四回は、1983年にリリースされたアルバム、その名も"BANCO"をご紹介。

ポップの完成系

1970年代も後半ごろから、シンフォニック路線から、ポップ路線へと、時代の影響もあって、変化していったバンコだけれども、今ひとつ、スタイルを掴みきれていない作品も見られた。しかし、この作品、それらとはちがい、ポップアルバムであるが故の、バンコらしい、イタリア臭いシンフォニックさは無いものの、イタリアンポップとしては、非常に高いレベルの完成度を誇っていて、ポップというフォーマットでのバンコらしい表現をようやく発見したという印象のする会心の出来になっている。

壮大でコンパクトに

そんな気合いの入り方、もしくは自信がアルバムタイトルに自らのバンド名をつけた理由でもあるのだろう。
しばしばライブでも取り上げられる、"Moby Dick" といい、久しぶりに取り上げられた、"Traccia"でアルバムの最後を飾るところといい、そして、その他の曲も、短くはある物の、特にコーラス回しに壮大な印象を持たせていて、そこに、キーボードサウンドが美しくから見込んでくるあたりは、バンコにしか出来ないポップセンスと言っていいと思う。壮大ながら、コンパクトに。"春の歌"でみせたポップセンスとシンフォニックセンスの適切な配合をこのアルバムでも見せつけているという印象。80年代のバンコのアルバムとしては、抜きんでた完成度を誇る作品である。