大失敗:レム



1.名SF
SFの巨匠スタニスワフ・レムの晩年の作品”大失敗”を読んでみた。


2.内容
宇宙を舞台としたSF作品で、”接触”を題材とした作品。で、まず、この接触が二つあって、まずは時間を超えた接触。異星で遭難しそのまま凍結した人間が未来に発見されて、そして凍結・再生され、遙か未来の人類と接触するという側面。これはまぁ、序章。で、そこから本当の異星人との接触を行うというのが、本題ともなる接触。宇宙を移動する手段を身につけた生命体が、強力なコンピューターとともに、知的生命体の住む惑星に到達し、コンタクトを行う。
ここで、この作品がただならぬ物であるのは、このコンタクトが容易にはいかないところ。そして、そのときにアクセス側の生命体がとる行動と、被アクセス側の生命体のとる行動およびその政治状況。


3.科学として
この作品は、レム作品らしく、複数のコアな議論が含まれる。その一つは、まずハードコアSFとしての側面であり、宇宙移動にまつわる様々な手段を科学的に説明するところで、正直言ってどこまで正確な議論かさえ判断できないほどに非常に難しい科学的議論がなされている。


4.哲学もしくは政治学として
それから、哲学的な側面。過去の生命を蘇生する時点から哲学的議論が始まる。そして、また接触にさいしても、大きな議論がなされ、そこには哲学的というか、生命体のもつ行動原理と、その行動がいかにして、過激な方向性へ、元来はそういう意図ではなかったとしても、行動が氾濫していくというところ。


5.最高峰
おそらく、文学としてのSFという意味では、最高峰にあたる作品だと思う。そこで為されている議論の方向性というのは、単純に宇宙旅行による楽しさだけではなくて、様々な状況下で人々のとる、とりうる行動とは何だろうか、というところを厳密に議論しようとしているように思う。


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大失敗 (スタニスワフ・レムコレクシヨン)
発売元 : 国書刊行会
発売日 : 2007-01 (単行本)
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読みやすくはないけれど
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