クロード・シモン氏 死去

ノーベル賞作家でヌーボーロマンを代表する作家の一人、クロード・シモン氏が死去した。
アラン・ロブ=グリエ と並び称されるヌーボーロマンの旗手。
残念ではあるが、時は流れるということか。
氏も戦争時には捕虜になるなどの経験を経ており、レジスタンス運動やその後の逃亡生活を経験したサミュエル・ベケット氏の経験に似たものがある。
そういった経験を経た人々があえて、物語性を廃してまで描こうとしたものはいったい何だったのだろうか。これは非常に重要なテーマだと思う。現時点ではそれらの経験を経ていない世代へとなっていくときに、こういった経験を経た末に何かを描き出した人々の真の意志をしっかりと引き継ぐことができるのか否かは今後の世界において重要な課題になると思う。珍奇なもの、難解なもの、取っつきにくいものとしてしかそれらを扱えないようでは、せっかくの偉大な人々の意志が無に帰してしまう。文章表現というものがどんどんと軽くなっていってしまっている現在、作家、書評家、出版社に突きつけられた重要なテーマであると思う。

奇しくも来年はサミュエル・ベケット生誕100年である。そんなことに何も意味がないが、いい機会である。いろいろと再び議論すべき時期ではなかろうか。