秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明:デイヴィッド ホックニー



1.現代美術家
さてさて、英国の現代美術家David Hockney。ポップアートに近い立場で、そこに、キュービズム的な表現が加わっているという印象の作風。代表作としては、Celiaという作品。これをはじめて見たときには結構衝撃を覚えた。あと、有名なのはフォトコラージュ。複数の写真を並べて一つの画面を構成する作品。多焦点的で、写真によるキュービズムという感じ。ちなみに、東京都現代美術館にはCeliaをはじめいくつかの作品がある。運が良いと、常設展で見ることが出来る。


2.そんな作家の書物
そんな作家が書いた作品「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」がとても面白い。これは、過去の美術作品において用いられていた手法について、作品を下に分析考察し、さらに、文献ベースでもその論拠を示すという美術評論というのか、美術論文というかの作品。
簡単に言うと、レンズと鏡を用いて実像を反射させてキャンバスに写し、それをなぞって輪郭を作り上げる、その輪郭ベースで作品を完成させるという手法。
2.1技術的な面白さ
これで面白いのは、科学技術が芸術に影響を与えると言うこと。そして、技術が新しいものを生み出すということが実際に起こっている(可能性がある)ということに面白さを感じる。
2.2芸術的な面白さ
芸術的には、ここで言及されている手法を用いると、レンズやキャンバスなど物理的な制限があるが故に、レンズを複数回動かす必要が出てくる。その結果、多焦点的になる。これが、偶然ながらだろうけど、David Hockney の写真コラージュ作品のイメージに近づいてくるところ。それから、様々な手法でリアルに近づいた表現がある時点で、その目標とするリアルの対象が最終的に画面で見ることの出来る類似性というリアルから、離れていくというのが現代美術の流れなのだというのが、この本でじっくりと言及している訳ではないが、うっすらと見えてくるところ。


3.いずれにせよ
いずれにせよ、我々は全くよくわからない場所に向かって、進んでいるに過ぎなくて、その過程ではよりよいと思われる手法を模索し、時にそれらのうちのどれかが多くの人に共感されれば、それがさらにすすみはじめるということだと思う。それが、技術によるのか芸術の系譜の中でどのような立場になるのかについては、過去を考察する場合には、とか、今後をどうすべきか考察する場合には役立つが、それが決定してくれることはそれほど多くないと言うことではないだろうか。そして、その過去に対する判断も何処まで正確なのかは不明であり、その前提条件が崩れると多くのものが崩れ去る可能性もあるということだろうか。
おそらく、カラバッジョの作品に、ここで言及されている手法が使われていると聞くと衝撃を受ける人も多いだろう。どこか、伝説にメスを入れるという感じでもある。しかし、それが何ともとても面白いことであると思う。
(ちなみに、ここでの言及内容は、まだDavid Hockneyの説というところで、広く一般に受け入れられているものではないはず。)


4.ちなみに
ちなみに、日本語版は1万円超でとても高い、英語版だとお店によっては半額ぐらいでお得。作品をベースに解説しているところの英語は比較的読み易いと思う。文献ベースのところは、それなりの英語力ではないとハードかもしれない、まぁ、文献ベースのところは日本語でもハードかもしれないが。

関連リンク:
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秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明
発売元 : 青幻舎
発売日 : 2006-10 (大型本)
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