「未来の回想」は時間を切り裂きながら



シギズムンド・クルジジャノフスキイ

ソビエト時代のウクライナの作家、シギズムンド・クルジジャノフスキイ 。
ソビエト時代には、作家としては注目されることはなかったが、死語になって、再評価されてきている作家。
いくつか邦訳がでつつあるが、そのうちの一つ、「未来の回想」を読んでみた。


回想録

シュテレルという希有な人間の回想録。タイムマシンを作り上げて時間旅行をする人物。
時間と空間の概念を分析しながら、時間旅行の可能性について思慮を深め、そして、それを可能とするマシンを作り上げようと努める。


いくつもの

しかし、それを実現する上での困難がいくつも訪れる。その困難を乗り越えて、遂に時間切断機は完成する。


主人公は、遂に旅に出る。それは一体何のためなのか、自分自身の理論の確かさを確認したいのか、それとも、時間から逃走しようとしているのか、いや、それとも、時間から逃走しようとしているのは現実の方なのか。


出版

時間を物理的に捉えきった果に出来上がったタイムマシンの観念的意味とは。
そして、30年出版されなかった小説が、物語の中では出版社に持ち込まれるものの。


霧がかった

一方で、文章は、その観念と数式の難しさが故か、そして、回想録という体裁をとっており、かつ、主人公が描写しきらないことも相まって、文章そのものも、切断されているように感じられる。
現実を生きること、生きないこと。霧がかった先の見えない希望。


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