気狂いピエロの決闘はあまりにも刺激的です



大映画祭週間

いくつかの地域の映画館では、三大映画祭週間と題して、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアのそれぞれの映画祭の受賞作品を上映している。
関東では、渋谷のヒューマントラストシネマが会場となっていて、いくつかある上映作品の中から特に気になった、「気狂いピエロの決闘」を見てみることにした。





気狂いピエロの決闘

この作品は、スペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督による作品。スペイン内戦からはじまり、独裁政権とその政権ののちの不安定期までを時代背景としてる。そんな時代に、一人の美人ダンサーを同じサーカスに所属する二人のピエロが奪いあうという筋。その筋だけからすると、コメディータッチの軽い作品かと思わせるのだが、そうはいかず、混乱の時代背景も含めて、まさに狂気が乱舞する展開へと進む。


二人のピエロ

二人のピエロ。一人は、サーカスにはなくてはならない人気ピエロ。そして、先述の美人ダンサーはこのピエロの恋人(妻?)。そこに現れたもう一人のピエロ。このピエロは、冒頭のスペイン内戦のシーンでピエロでありながら戦闘に巻き込まれた上に囚人となった人物の子供である。


狂気の伏線

確かに、すでに伏線は引かれていた。スペイン内戦における戦闘。そして、その時に抱えた復讐心。そして、目前での父の死。悲しみばかりをたたえた男は、子供を笑わせることのできるピエロにはなれなくて涙のピエロにしかなれない。
一方で、笑いのピエロは、舞台を離れると酒におぼれ、そして、恋人に暴力をふるうような男。サーカスになくてはならないが、強権を振りかざし続ける。


狂気の破裂

そして、その狂気がついに破裂する。涙のピエロと美人ダンサーの浮気的行動。怒り狂う笑いのピエロ。そこから、一気に狂気が加速する。
ストーリーを進めるシーン割が少しづつ進んできたと思われた映画の進行も、そこからは、スプラッターな描写も交えたカルト映画の様相を濃くしていく。


破壊

戦いの中で、笑いのピエロの顔面は崩壊し、そして、涙のピエロは自ら顔面を改造する。そして、そこから、美人ダンサーも交えた上記を逸した逃走劇・追走劇へと変わる。


時代背景

一方で、忘れてならない映画のシーンとして、ところどこに挟み込まれるスペインの政治的混乱を感じさせるニュースなどのシーン。私なんかは、スペインの歴史についてあまり詳しくなくて、この映画を見た後にいろいろと調べてみたのだけれども、スペインの20世紀は予想以上に混乱していて、民主化がある程度浸透するのは、1970年代も後半になってからだという事実を知るに至った。そして、その時代背景は少なからず、この映画では重要な意味を持つのだと思う。


決闘

そして、最後の決闘。狂気のピエロ二人が、まさに狂気の戦いを始める。怒りの狂気と優しさの狂気。女性を挟み、あまりにも喪失におびえすぎる二人のピエロが、その喪失の穴埋めをかけて戦う姿は、その狂気的な形相とスプラッターな描写も含めて、鑑賞者の精神にづきづきと突き刺さってくる。それは、時に画面から目を背けたくなるほどのそれであり、あまりにも強い刺激が画面からあふれ出してくる。


喪失

そして、結局何を得たのだろうか。結局喪失しただけなのだろうか、この二人のピエロは。
一方で、政治的メタファーを感じてしまうのは、それは、深読みしすぎだろうか。二つに分裂して戦いあったスペイン内戦。強権的な独裁と共産主義と。しかし、ただ戦いに明け暮れるのみで、国土は荒廃し国民は疲弊するのみ。結果、何も得ることはないままに、ただ狂気が過ぎ去って行っただけであったという。
二つの争いというのは、常に暴走しすぎて、そして、本来の目的を逸脱して爆発し、多くを巻き込む混乱だけを残してしまう。


刺激的

あまりにも刺激的な映画です。最後の深読みが深読みすぎというところもあるかもしれませんが、カルト映画の狂気的な刺激に満ちた映画としてとらえることもまた一つのとらえ方だと思いますし、それ以上の何かを読み取るのもまた一つのとらえ方ではないかと思わせるような、そんな深みのある映画でした。
しかし、やっぱり、描写はあまりにも刺激的なので、後味悪いので、そういった体験が耐え難い方は要注意です。


関連リンク:
三大映画祭週間2012
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